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イギリス子育てレポート

ロンドンで子育て奮闘中。調べたこと、やってみたこと、感じたことをレポートします。

公共の場所での授乳、イギリスの場合

イギリスで育児

年明け早々、日本のメディアではベビーカー問題に続いて公共の場での授乳の賛否が取り上げられているようですね。職場の他の日本人お母さんから話を聞き、こちらのブログで内容を読みました。

suminotiger.hatenadiary.jp

 

日本で子育てをしていない海外在住者にしてみると、こういう話を聞くたびに、日本は本当に子育てしにくい国に見えて一時帰国するのが心配なります。でも、去年の一時帰国の際はかなり緊張して行ったのですが、一度も嫌な経験をしなかったどころか、お店の人やバスや電車で乗り合わせた人、すれ違った人にまで、可愛い可愛いと言ってもらえて、「実際はみんな優しいじゃないか」と肩透かしを食らったような気分にさえなりました。

そのときはショッピングモールのフードコートやファミレスでもケープをつけて授乳もしました。日本人のことなので、本当は不快に思ってても誰も何も言わなかっただけなのかもしれません。まして外国人の夫が一緒にいたら言いにくいのだろうな。それを逆手にとっていた自分もいます。その場で声を上げにくい文化があるから、インターネットなどの場で議論が大きくなるのかもしれない、と感じました。

公共の場所での授乳についてのこういった議論、イギリスではあまり耳にすることはないけど実際のところどうなのだろう、と疑問に思ったので少し調べてみたので紹介したいと思います。

 

公共の場所で授乳する権利

まず、授乳を理由にサービスを提供しなかったり退出を求めたり、授乳を止めるよう要請するなど、授乳を否定する行動をレストランや店などの施設がとることは差別にあたるとして、法律で禁止されています。

Breastfeeding in public places | Maternity Action

 

法律のおかげなのか、人々があまり気にしない文化だからなのか分かりませんが、周りのお母さん達も堂々とカフェやレストランで授乳をしているし、私自身も当たり前のことのように授乳してきました。さらに、イギリス人ママ達はケープもあまり使わないです。赤ちゃんによっては嫌がるし慣れるまで練習が必要だからなのか、わざわざ買う必要ないと思ってるのか。大判のガーゼをかぶせている人も見たことがありますが、ほとんどの人が上手く赤ちゃんの体で見えないように授乳しています。このニュースの記事の左の写真のような感じです。

www.telegraph.co.uk

これはロンドンの高級ホテルのレストランで授乳し始めたら、スタッフにショールを被せるように要求された、という約2年前に起こった話。ショールをしていたほうが反対に目立つ、というのがこの女性の主張です。最終的に他のお客さんから苦情がでないならショールをしなくても良い、ということになり、誰も苦情を言わなかったからそのまま授乳したようです。

この一件の後、授乳姿を隠すように要求したこの高級ホテルに対し抗議活動が起こったり、政治家が公共の場所での授乳をサポートする発言をするなど話題になったようです。

www.theguardian.com

イギリス人女性達、強いです。彼女たちが戦ってきてくれたおかげで、今まで私が安心して外で授乳できたのだな、と思います。日本もそうなって欲しいと思う一方で、同じやり方を日本でしたら反対に反感を買って赤ちゃん連れの印象が悪くなってしまう気もします。

 

授乳に関する意外なアンケート結果と政府の対応

では、一般に授乳に対する人々の意見はどうなのでしょう。ある政府の記事が次のような数字を挙げています。

New mothers are anxious about breastfeeding in public - Press releases - GOV.UK

  • 女性は公共の場所でも快適に授乳できるべきだー48%
  • どこでも授乳は受け入れられるべきだー44%
  • レストランでの授乳は受け入れられるー57%
  • 公共交通機関での授乳は受け入れられるー51%

これは思っていたよりも反応が悪いです。まだまだイギリスでも公共の場所では授乳を快く思っていない人がいる模様です。ただ、72%の人が公共の場所での授乳をサポートすると回答してはいるようなので「場所をわきまえて欲しい」というところでしょうか。

 

この状況を政府は改善していきたいと考えているようです。世界的に見てイギリスでは母乳育児する人の割合が低いと危惧されています。

同じ記事によると、74%の女性が母乳で育て始めるのに、6~8週間後には47%に落ちるそうです。さらに、別の記事によると最初の6週で諦めてしまう人の80%は続けたかったけれど続けられなかった、とのこと。その理由の一つとして、公共の場所での授乳に対するネガティブな反応が挙げられています。

www.theguardian.com

私の周りの月齢が近い赤ちゃんがいるママ友達も、みんな生後半年経つといつのまにか母乳からミルクに切り替えていました。イギリスには日本のような母乳神話もないので、産前のように出かけたいのに2、3時間おきの授乳をカフェやレストランで簡単にできないのであれば、諦めてしまう人が多いのは理解できます。せっかく母乳育児を始めたのに、そんな風にやめてしまうのは残念なことです。

イギリスにも授乳室はありますが、十分に整備されているとは言えません。授乳室がもっとあったとしても、「授乳したいなら授乳室に行け」と個人の行動を制限するのは間違いなくこの国の人には受け入れられません。なので、公共の場所での授乳を推進する政府の方針は納得がいくものです。

推進しているので当然のようにNHS(国営医療サービス)が外出先での授乳についてのアドバイス記事を書いていて、その中には「もっと多くの人がすれば、もっと普通のことになる」とあります。私もその言葉に同意で、当たり前のことになって欲しいと思います。こういうことは小さな積み重ねの結果なので、私自身も外で授乳したことで公共の場所で授乳がより一般的になるよう少しでも貢献できたのなら本当によかったです。

Breastfeeding in public - Pregnancy and baby guide - NHS 

 

個人の自由と社会の調和

以上が、私が調べたイギリスの状況です。予想外にまだ改善の余地ありのようですが、少なくとも法律で保護されて政府も推進しています。少なくとも「受け入れられるべき」という考えがあります。

イギリスは歴史的にも個人の自由と平等のため戦ってきた国なので、女性たちが公共の場所で授乳する権利も勝ち取ってこれたのも分かります。でも、周囲との和を大切にする日本で、平等に扱われる権利があるべきと正面から衝突したら、やはり問題が起こってしまうでしょう。

 

必要以上に(と、少なくとも私は感じる)周りを気にする日本の風潮を息苦しく感じ海外に出た私ですが、そのおかげで日本にはいいところが沢山あることも分かります。ゴミ一つ落ちていない駅や、誰も電話で話していない電車の中にいると、日本はすごいと思います。大多数の人が自分個人のことよりも社会全体のことを考えているからだと思います。(そうしないといけないという社会的プレッシャーもあると思いますが。)

でも、例の新聞に投書した大学院生がケープで隠して授乳している人にさえも目のやり場に困ると感じるようなほどに、気を使わなくてもいいのではないでしょうか。授乳していたって、他のお客さんと同じように扱ってくれればいいような気がします。何か頼まれたら可能な範囲で対応すればいいのではないでしょうか。私たち子連れも、自分が子供を連れているからと特別扱いを期待してはいけないと思います。小さい子供がいるために気にかけてもらえることを、当たり前と受け取らないで感謝しないといけないと思います。

 

だから、負担になるほどの気遣いはしなくていいから、多少のことには目をつむって欲しい、というのが私の考えです。これは日本よりずっとイマイチなイギリスのサービスに慣れてしまった海外在住者の戯言かもしれませんが。

娘はもう卒乳したので次回の一時帰国のとき私はもうこのことに悩む必要がありませんが、いつか2人目ができて日本に行くことがあったら、そのときには状況が少しでも良くなっていることを願います。